◆ はじめに:なぜ昔のボールは茶色だったのか?
古いサッカー写真を見ると、
今の白黒ボールとはまったく違う“茶色いボール”が目に入ります。
実はこれ、単なるデザインではなく、当時の素材や製法が深く関わっている歴史的な理由があります。
では、なぜボールは茶色が当たり前だったのでしょうか?
◆ 結論:革製ボールの“素材の色”がそのまま使われていたから
昔のサッカーボールは 本革(牛革) で作られていました。
そして、革の自然な色が「茶色」だったため、染めることなくそのまま使われていたのです。
つまり、
革=茶色 → ボールがそのまま茶色
という、非常にシンプルな理由がまずあります。
しかし、これだけではありません。
茶色が長く使われたのには他にも深い背景があります。
◆ 理由①:革は加工が難しく、染色にはコストがかかった
当時の技術では、革を均一に白く染めたり、耐久性を保ったまま色を付けるのはとても難しい技術でした。
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染料が定着しない
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雨で色落ちする
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剥がれたりムラが出る
こういった問題があり、自然のままの革色(茶色)で使われるのが最も実用的だったのです。
◆ 理由②:試合環境が泥だらけで、白はすぐ汚れた
20世紀前半のピッチは今のように整備されておらず、
泥・砂・芝の状態がバラバラでした。
白く染められたとしても…
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数分で土の色に染まる
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汚れで色ムラがひどくなる
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プレイヤーも見えにくくなる
こうした理由から、茶色のままの方が“汚れが目立たない”というメリットもありました。
◆ 理由③:かつてのボールは“縫い目のレース”があり、色を塗ると硬くなった
昔の革ボールは、
中央に紐(レース)があり、それを手で締め上げて空気袋を固定する構造でした。
このレース部分に塗料を塗ると…
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硬化して蹴り心地が悪くなる
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ヘディング時に危険になる
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ボールのバランスが悪くなる
そのため、色を塗らず自然な革色をキープする方が安全だったのです。
◆ 白黒ボールの登場で世界が変わる
茶色ボールが主流だった時代は長く続きましたが、
大きな転機が来たのは 1960年代〜70年代のテレビ放送普及。
白黒テレビでは、茶色のボールが芝や背景と同化して見えづらかったため、
「テレビで見やすいように」
という目的で誕生したのが、あの有名な 白黒パネルのデザイン です。
特に1970年W杯の「Telstar(テラスタ―)」が全世界に広まり、
白黒ボールが世界標準として定着しました。
◆ まとめ:茶色ボールは時代の技術と環境が生んだ必然
サッカーボールが昔茶色だった理由は、次の通り。
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素材が“本革”で、その自然な色が茶色だった
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染色技術が未発達で、耐久性が落ちた
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泥だらけのピッチでは白がすぐ汚れた
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レース構造のため塗装に不向きだった
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テレビ普及前は“見えやすさ”より実用性が優先されていた
つまり、
茶色ボールは時代の技術・環境の中で最も合理的だったデザインなのです。
そしてテレビ時代の到来によって、
白黒ボールが“視覚的に最も優れた選択肢”となり、現代のボールへと進化していきました。
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